国際保健用語集

用語 非政府組織
概要 (英語訳:Non-governmental Organization)

1945 年、国際連合の発足の後、国連憲章第10章「経済社会理事会」・第71条において、政府と異なる立場で国連との協議資格をもつ市民組織としてNGOという用語が使われはじめた。故・室靖教授によると、世界の援助の歴史を見ると、NGOによる援助は政府開発援助(ODA)よりずっと早くからおこなわれてきた。たとえば、セーブ・ザ・チルドレン・ファンド(SCF-UK)は第一次世界大戦末期に援助活動を始めたのに対し、ODAの起源はトルーマン大統領による1949年の「ポイント・フォア計画」が最初という。日本でNGOの語が広く流通するようになったのは、インドシナ難民救援活動が本格化した1980年代以降。日本はその意味でNGO後進国だった。平成7年の阪神淡路大震災での救援活動、平成10年の特定非営利活動促進法制定が、NGOの認知と活動に弾みをつけた。

JANIC(国際協力NGOセンター)によると、国際協力NGOとは、「海外・国内を問わず、地球規模の課題(開発・人権・平和・環境・緊急救援など)に取り組む非政府・非営利の市民組織」と定義される。JANICのNGOダイレクトリー(2005年版)には、286団体が紹介されているが、うち保健・医療分野(事業の重複あり)は114団体と、教育分野についで多い。最近では、エイズMDG(ミレニアム開発目標)、地雷やクラスター爆弾禁止、女性の人権、地球温暖化対策など、いわゆるグローバル・イッシューに取り組む、国境を越えた市民連携として、NGOよりも、Civil Society Organization(CSO:市民社会組織)という用語がよく使われるようになってきた。NGOがCSOを構成する重要なアクターであることは間違いない。(本田徹)
用語 参加型農村調査
概要 (英語訳:PRA, Participatory Rural Appraisal)

近年、プロジェクトの立案や評価に住民の参加の必要性が認識されるようになり、チェンバースらが提唱した参加型調査手法の一つ。他にも、RRA(Rural Rapid Appraisal:迅速農村調査)、PLA(Participatory Learning and Action:参加による学習と行動)などの参加型調査手法がある。開発援助プロジェクトの多くが専門家の主導により実施されてきたことに対する批判から生まれ、住民がプロジェクトの企画立案、実施、評価にいたるすべての過程において、主体的に参加するべきであるという参加型開発(Participatory Development)の理念に基づいている。これらの参加型調査手法においては、外部者の役割は、地域住民の学びのプロセスを手助け(ファシリテート)することにある。

近年は、国際機関、ドナー機関、NGOなどが参加型手法を用いてプロジェクトの立案や評価を行うことが多くなった。しかし、どのように「参加型」を謳ってみても、一定の資金と期間を限定したプロジェクトを実施するという外部機関の意志と、伝統と文化の中で生きてきた地域住民の行動様式や時間軸の間には大きなギャップが存在する。参加型手法の限界性を認識した上で、使用すべき調査法であると思われる。(中村安秀)
用語 国連人道問題調整事務所
概要 (英訳 UNOCHA United Nations, Office for the Coordination of Humanitarian Affairs)

通称はOCHAと呼ばれる。1992年に設置された国連人道問題局(UNDHA:Department of Humanitarian Affairs)が、1998年に改組され、多発する複合災害(Complex emergencies)や、自然災害に対する国連の人道援助活動能力の強化と、人道NGOなどとの連携調整を行う。以前、各国連機関が個別に提出していたConsolidated Appealなど、あらゆる緊急事態に対する人道支援活動の調整や、政策策定やその提案などを行っているが、あくまで実践機関ではなく、調整機関である。(明石秀親、喜多悦子)