概要 |
(英語名称:FGM/C, Female Genital Mutilation/Cutting)
女性性器切除(FGM/C)とは、「医学的治療行為としてではなく、女性の外性器の一部または全部を切除、あるいは女性器を損傷すること」を指す。
FGM/Cを実施している国はおよそ30カ国であり、アフリカ、中東、およびアジアの一部(インドネシア)に集中している。現時点で、毎年300万人がFGM/Cを受けている。また少なくとも2億人の被施術者がいると推計されており、うち半数以上はインドネシア、エジプト、エチオピアの3カ国に集中している。
多くの場合5歳以下の乳幼児に対して実施されるが、例えばイエメンでは85%が生後1週間以内の早期新生児期に行われている。その実施者は伝統的治療師が主であるが、インドネシアでは有資格の医療従事者が行うほうが多い。
FGM/Cは、切除する部位、腟を縫合などで閉鎖する処置の有無などにより4つに類型化される。
一般に切除の範囲が広いほど重症度が高い。その短期的合併症として、切除そのものに伴う疼痛、出血、感染、尿閉がある。これらが重症化すればショックから死に至ることも起こりえる。長期的には皮膚の瘢痕またはケロイド形成、尿路および性器の解剖学的変形に伴う急性・慢性感染症や月経困難症が発生する。また腟入口部が閉鎖されていると、性交渉や分娩の際に支障を来すため、医学的処置を要する。FGM/Cおよび上記の合併症発生に伴う精神的苦痛、うつ、不安なども大きな問題である。
FGM/Cが実施される背景には、さまざまな社会/文化的要因があり、したがってその解決手段は一様ではない。しかしながら、FGM/Cは明らかに女性に対する人権侵害である。2003年には、FGMを含めたあらゆる性暴力、性差別を禁じるマプト議定書が採択された。継続的な廃止に向けた啓発活動と法的基盤の整備などの対策が重要であり、2015年に策定されたSDGs「持続可能な開発目標」においても、ターゲット5.3においてFGMを有害な慣行として撤廃することを掲げている。(松井三明) |