国際保健用語集

用語 家族計画
概要 (英語訳 : Family Planning) 

カップルまたは個人が、避妊を通して、自発的に子どもをいつ、何人産むのか計画すること。また、単に産児制限といった意味だけではなく、出産の間隔と時期を調節することである。望まない妊娠による人工妊娠中絶、若年もしくは高齢での妊娠、度重なる妊娠、出産などは、母子の健康に影響を及ぼすが、出産の間隔や時期には、母子の身体的な問題だけでなく、家族構成や育児環境、周囲の理解といった、精神的、社会的、経済的な問題も反映される。

家族計画推進には、母子の健康確保や福祉の向上が基本条件であり、出産年齢への配慮、女性の教育機会の保障、避妊法選択の自由、乳幼児死亡の削減、子どもの育成環境への配慮などが重要となる。有効に家族計画プログラムが実行されている国では近代的避妊法の利用は増加しているが、開発途上国においては、貧困や男女の性差別によって、女性が避妊法を実行することができないために妊娠に至るといったアンメットニーズが問題となっている。リプロダクティブヘルス・ライツの視点からも、家族計画は重要である。
(池上清子) 
用語 国連エイズ合同計画
概要 (英語訳 : UNAIDS the Joint United Nations Programme on HIV/AIDS) 

初めてのエイズ患者の発見以来エイズ対策においてはWHOがその中心を担っていたが、次第にエイズの及ぼす社会的・経済的な影響が明らかとなり、社会全体の問題として取り組む必要のあることが強く認識された。その結果1994年に行われた国連経済社会理事会において国連エイズ合同計画(UNAIDS: the Joint United Nations Programme on HIV/AIDS)の設置が承認され1996年1月に正式に発足した。国連エイズ合同計画は複数の国連機関が協同し、国連システム全体として、HIV新規感染の予防、感染者へのケア、エイズによる様々な影響の軽減など、世界におけるエイズ対策の強化に取り組んでいくことを目的としており、2008年4月現在、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)UNICEF(国連児童基金)?、WFP(世界食糧計画)、UNDP(国連開発計画)UNFPA(国連人口基金)、UNODC(国連薬物犯罪事務所)、ILO(国際労働機関)、UNESCO(国連教育科学文化機関)、WHO(世界保健機関)WB(世界銀行)ら10の機関が共同スポンサーとなっている。本部はジュネーブにあり、22の理事国、共同スポンサーである国連機関、および5つのNGOからなるプログラム調整理事会(PCB:Programme coordinating board)によって、政策などの重要事項が決定される。国連エイズ合同計画では2年毎にThe UNAIDS Unified Budget and Workplan (UBW) とよばれる統合予算および行動計画案を策定しており、この中で定められた共通の優先課題に対して、それぞれの機関とUNAIDS事務局の協調のもと活動が実施されている。主な活動としてはアドボカシーやリーダーシップの動員、方針策定や情報発信、モニタリング、市民組織の巻き込みとパートナーシップの構築、効果的なエイズ対策を支援するための人的・技術的資源及び財源の動員などがあげられる。 (石川尚子)
用語 国連難民高等弁務官事務所
概要 (英語訳 :United Nations High Commissioner for Refugees) 

国連難民高等弁務官事務所規定に基づき、1951年に設立された。高等弁務官は、その権限の範囲にある難民に対して、国連の権威のもとに国際的保護を提供し、これら難民の自発的帰還または新しい国の社会への同化を促進することによって難民問題の恒久的解決を図る。また緊急時には難民に対して法的、物的両面での保護、支援を与えることを目的とする。

難民の保護に加え、国際条約の締結及び国際条約の批准の促進などを実施している。1950年に国連総会で採択された規定によれば、UNHCRが保護を与える難民とは、『人種、国籍、宗教、もしくは政治的意見を理由に迫害を受ける恐れがあるため、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることが出来ない者、または国籍国の保護を受けることを望まない者』を言う。具体的な内容としては、自発的な帰還、受入国における定住、または第三国における定住を図ることにある。その他、難民の発生を未然に防ぐ予防措置に留意した活動、紛争終了後の復旧・復興への円滑な移行のために支援を行う。2003年の時点で世界約120カ国、277カ所に現地事務所を持っている。1990年代にはアフリカのソマリアやルワンダ紛争による難民の援助活動を行い、1999年にはユーゴスラビアにおけるアルバニア系難民の援助、インドネシアの東ティモールからの避難民の援助、などを行った。1954年と1981年にノーベル平和賞を受賞した。本部はスイスのジュネーブに置かれている。 
用語 災害時迅速評価
概要 (英訳 Rapid Assessment、もしくはRapid Needs Assessment)

災害時のニーズ・アセスメントは、災害対応を成功させるために不可欠である。その目的は、第一に対応の優先順位の決定と計画策定のためであり、第二に、外部の援助者に対して災害の程度を知らせる目的もある。迅速評価では、災害状況をレポートし、初期対応として最適なものを提言する。その情報としては、心象、具体的な数、事実が含まれ、時間や場所を特定でき、特定の目的に対して意味があるときに、有益な情報となる。緊急対応の優先順位としては、まず災害を被った生命を助けることであり、次いで、生命維持のために必要な飲み水、衛生、十分な食料、適切な医療援助、シェルター(住居や衣服)、燃料などが挙げられる。また、肉体的暴力や攻撃などから特に難民や国内避難民を含む被災民を守り、さらには、心理的、社会的なストレスから被災者を守らなければならない。(明石秀親)
用語 疾病負荷
概要 (英語訳 : Global Disease Burden) 

世界中で、疾病により失われた生命や生活の質の総合計を「疾病負荷(GBD: Global Burden of Diseases)」という。

傷害や生活の質の度合いを考慮した健康指標として「健康寿命」、「質を考慮した生存年数(QALY: Quality -Adjusted Life Years)」、「失われた生活年数(YPLL: Years of Productive (or Potential) Life Lost)」、「障害と共に生活する年数(YLDs: Years Lived with Disability)」などの指標が使われている。

QALYを使った事例として、ガンによる生存年数が3年であった場合、後遺症が残れば効用値(重み付け)である0.5を掛けて3×0.5=1.5年と計算する。QALY等の効用により重み付けされた健康指標は費用効果分析などに活用される。