国際保健用語集
用語 | 希少疾病用医薬品 |
---|---|
概要 |
(英語訳:Orphan drug) 医療上の必要性が高いにもかかわらず、患者数が少ない(日本の薬事法では、日本における対象患者が5万人未満)希少疾病 (Orphan disease) の治療に用いられる医薬品をいう。日本では未承認の物も含めると200種類以上のOrphan drugが指定されているおり、対象疾病はムコ多糖症VI型、骨ページェット病、筋萎縮性側索硬化症など多岐にわたる。 一方、希少疾病とは、背景も定義も異なるが、誤って混同されるものとして「見捨てられた病気 (Neglected disease)」がある。見捨てられた病気は、患者数は少ないわけではなくトリパノソーマ症のように年間5~15万人が感染しさらに5000万人が感染する危険性を有する疾病のことである。 リューシュマニアやブルーリ潰瘍なども同様に見捨てられた病気である。 これらの疾患には、目下のところ安全で有効な治療手段がなく、罹患した人々は重症な障害に苦しみ、死に至る者も少なくないことから、早急な治療薬の開発が必要である。しかしながら、これらの疾患の罹患者の大多数が、開発途上国の貧しい人々であるため採算性の点から製薬産業はそのような医薬品を開発あるいは製品化の対象としていない。先進国などの公的支援による研究・開発が望まれる。(奥村順子) |
用語 | 後発開発途上国 |
---|---|
概要 |
(英語訳:LLDC,landlocked developing country) 開発途上国の中でも特に開発の遅れた国を指す。1974年の国連総会で、開発に関して特別な配慮をはらうことを決めた。一人当たりのGDP(99年現在一人当たりGDPが899ドル以下)、人的資源開発の程度(平均余命等)、経済構造の脆弱性(GDPに占める製造業の割合等)を基準として決定する。現在、約50ヶ国が「後発開発途上国」の基準に該当する。このうち半数以上をサハラ以南アフリカ諸国が占める。後発開発途上国に暮らす人口は現時点で約7億人と推定されている。(山本太郎) |
用語 | 微量栄養素 |
---|---|
概要 |
(英語訳 : Micronutrient) |
用語 | 必須医薬品 |
---|---|
概要 |
(英語訳 : Essential MedicineまたはEssential Drug*) 「必須医薬品とは、大多数の人々が健康を保つために必要不可欠なものであり、決して不足することなく、必要とする人々にとって適切な投与形態で、誰もがアクセスできる値段で提供されるべきものである。」と世界保健機関 (WHO) は定義している。必須医薬品という概念は、1978年のアルマ・アタ宣言における8つのプライマリヘルスケア戦略のひとつとして内容にもりこまれ、必須医薬品が人々の健康にとって必要不可欠なものであることが再確認された。 1977年以来、WHOは必須医薬品モデルリストを定期的に改訂・発行しており、2007年3月には、第15版が発行された。新薬の開発、新興・再興感染症の罹患率の変化などから新たな医薬品が追加されてきたが、単に品目数を増やすのみでなく、削除医薬品も検討され収載薬品は増減を繰り返しつつ近年は320種類前後で推移している。また、2007年10月には12歳以下の小児を対象とした小児用必須医薬品モデルリストも初めて発行された。これらのWHOのモデルリストは各国がその国独自の必須医薬品リストを選定する際の参考資料として活用されている。 各国がそれぞれの疾病構造に応じて、治療指針と合わせて必須医薬品リストを作成することで、一部のビタミン剤などのように必要不可欠とはいえないにも関わらず使用されている医薬品を排除することが可能になる。また、同リストは通常、一般名(成分名)で記載されるものがほとんどであることから、ジェネリック医薬品の使用を推進するなど、医療費の削減にも貢献すると考えられる。(奥村順子) 【*注】 近年では麻薬などを意味する‘Drug’と区別するため、‘Medicine’を使うことが多い。 |
用語 | 急性呼吸器感染症 |
---|---|
概要 |
(英語訳 : ARI, Acute Respiratory Infections) 急性呼吸器感染症(ARI)の中で特に肺炎は、症状が重く死亡率も高いので早期発見と適切な治療が大切である。しかし途上国においては、レントゲン検査が実施できるとは限らない。 そこで呼吸数と陥没呼吸の有無により、ARIを?上気道炎、?軽症肺炎、?重症肺炎、に分類し対処する。 “咳”のみが症状の場合は上気道炎として対症療法を行い、抗菌薬は投与しない。ただし、A群溶連菌感染症や中耳炎に対しては抗菌薬を考慮する。 “咳”と“多呼吸”を認める場合は肺炎である。1分間の正常呼吸回数は年齢によって異なり、低月齢乳児では生理的に呼吸数が多い。 “多呼吸”の判定基準は、2ヶ月未満:60回/分以上、2ヶ月以上1歳未満:50回/分以上、1歳以上5歳未満:40回/分以上である。 「軽症肺炎」の患者には、外来で抗菌薬を投与する。“陥没呼吸”を認めれば、入院治療の必要な「重症肺炎」である。 意識障害や経口摂取不良など“危険な臨床徴候danger signs”に注意することも大切である。 用いる抗菌薬は、ペニシリンが基本薬剤となる。治療開始後48時間で効果を評価し、現状の治療を継続するのか変更するのかを検討する。 低出生体重、栄養不良、母親の知識不足などは児のARI罹患や重症化の危険因子であり、ARI対策として母子保健の向上や教育啓発活動、IMCIの実践が有用である。(中野貴司) |
用語 | 性感染症 |
---|---|
概要 |
(英語訳 : STIs, Sexually Transmitted Infections) |
用語 | 感染症の根絶 |
---|---|
概要 |
(英語訳:eradication of infectious disease) 感染症の根絶(eradication of infectious disease)とは、計画的な対策の結果、特定の病原体による感染症の発生が、恒常的に、世界的にゼロにまで減少したことと定義される。それに対し、感染症の絶滅(extinction of infectious disease)とは、地球上のあらゆる実験室や自然界から病原体が存在しなくなることと定義される。例えば、天然痘は、世界的な対策によって感染症の発生は完全に無くなったことから、根絶となったが、病原体である天然痘ウイルスは、ロシア及び米国の実験室で保管されていることから、絶滅には至っていない。 通常、ある感染症が根絶されると、感染者を減少させるための日常的な疾患対策は不要となるが、病原体が絶滅されない限り、再発生の可能性はゼロとはならない。そのため、発生監視(サーベイランス)や発生時の危機管理は、継続させることが必要となる。(中島一敏) |
用語 | 成長モニタリング |
---|---|
概要 |
(英語訳 : Growth monitoring) |
用語 | 拡大予防接種計画 |
---|---|
概要 |
(英語訳 : EPI, Expanded Programme on Immunization) 世界のすべての子どもたちを予防可能な感染症から守るために、基本的なワクチン接種の推進を目的としてWHO によって開始されたプログラムである。EPIは、1978年にアルマ・アタ宣言として採択された“health for all by 2000”を達成するために、不可欠な要素のひとつと位置づけられた。EPIが開始された背景には、天然痘の流行がワクチンの普及によって制圧され、さらに根絶も達成したことにより高い費用対効果が実証されたという事実がある。1974 年にEPIが始まった当初は、BCG、ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ、麻疹の6ワクチンが対象であったが、その後B型肝炎やインフルエンザ菌b型(Hib)も推奨対象に加わり、さらに2000年のGAVIの設立によってEPI活動は加速され新しいワクチンである肺炎球菌結合型やロタウイルスも乳幼児の疾病負荷を軽減するために有用なワクチンと考えらその対象ワクチンは拡大しつつある。予防接種は、小児のみならず、年長児や思春期世代、妊婦においても健康を守るために不可欠な手段の一つである。ポリオ根絶は目標達成の最終段階に入り、麻疹や新生児破傷風の排除も世界各地で成果をあげつつあるが、これらの基本になるのはEPIである。(中野貴司) |
用語 | 政府開発援助 |
---|---|
概要 |
(英語訳 : Official Development Assistance) |