(英語訳:Maternity protection)
女性は男性と異なり,妊娠,出産,哺育という特有の母体機能をもっている。このような生理的・身体的特質に照らして,労働の場において女性を特別に保護する措置が,母性保護と総称されている。日本では、昭和22年労働基準法が制定されたとき,女性に対する特別な保護として,(1)時間外・休日労働の制限,(2)深夜業の禁止,(3)危険有害業務の就業制限,(4)坑内労働の禁止,(5)産前産後休暇と妊娠中の軽易な業務への転換(出産休暇),(6)育児時間,(7)生理休暇,(8)帰郷旅費、が規定された。昭和60年の男女雇用機会均等法では、さらに、性別を理由とする差別の禁止、婚姻妊娠出産等を理由とする不利益取り扱い禁止、セクシャルハラスメント対策、母性健康管理措置、労働者と事業主との間の紛争の解決が定められ、働く女性の母性健康管理措置は事業主の努力義務から措置義務へと変わるなど、母性保護規定として様々な改訂が行われている。
国際的には、1994年にカイロで開催された「国際人口開発会議」で提起されて以降、母性保護の概念をさらに拡大して、女性の初経から閉経にいたるまで避妊、不妊、妊娠中絶、出産、授乳、更年期まで含む、女性の性と生殖に関する健康(リプロダクティブ・ヘルス)のための権利とされている。(藤田則子) |