国際保健用語集

用語 結核
概要

(英語訳:TB, Tuberculosis)

結核は、抗酸菌群のひとつである結核菌(Mycobacterium tuberculosis)が原因で起こる感染症であり、主な感染経路は空気感染(飛沫核感染)である。結核患者から排出された喀痰等に含まれる結核菌が空気中を浮遊し、それを吸い込むことで感染するため、日常生活において、結核の感染を予防するのは困難である。

WHOは、世界人口の3分の1、約20億人が既に結核菌に感染していると推計しており、そのうちLTBI(潜在性結核菌感染症)の約10%が、一生の間に結核を発病すると考えられている。結核の発病を促進する最も強力な因子の一つは、HIV感染であり、HIV感染者が結核に感染している場合、結核の発病率は非常に高くなる。

WHOによると、2015年には約1000万人の新規結核患者が発生し、約140万人が死亡したと推計されており、患者の発生と死亡との大半は、アフリカとアジアである。新規結核患者のうち約6割は、インド・インドネシア・中国・ナイジェリア・パキスタンおよび南アフリカの6カ国において発生している。

結核の診断で最も重要な検査は、結核菌自体を見つける菌検査(塗抹検査・培養検査・遺伝子検査等の結核菌検査)であり、開発途上国においても同様である。結核の治療は、複数の抗結核薬の組み合わせを一定期間服用する標準的治療方法が適用される。現在推奨されている標準的な結核治療法は、ヒドラジド(INH)、リファンピシン(RFP)、エタンブトール(EB)またはストレプトマイシン(SM)、ピラジナミド(PZA)の組み合わせにより、6~8ヶ月間実施するもので、薬剤耐性がなければ、ほとんどの結核患者で治癒することが可能である。
WHOは、2035年までに世界における結核蔓延状況を終息させることを目指した「結核終息戦略The End TB Strategy」を2015年に発表し、「統合された患者中心のケアと予防」・「骨太の政策と支援システム」・「研究と技術革新の強化」を柱として、今後20年間(2016-2035)結核対策に取り組む姿勢を示した。(大角晃弘)