国際保健用語集

用語 ラロンド報告
概要 (英語訳:Lalonde Report)

カナダの保健福祉省大臣(minister of national health and welfare)であったMarc Lalondeが1974年に発表した報告書「カナダ国民の健康に関する新しい考え方(A new perspective on the health of Canadians)」を、彼の名を冠してラロンド報告と呼ぶ。

報告書は、健康を決定する要因は生物学的要因のみではなく、環境要因、ライフスタイルそして保健医療サービスも含まれると指摘した。それゆえ保健医療サービスだけへの医療費支出が必ずしも健康改善に直結するとは限らず、環境やライフスタイルの変容への投資も必要であると論じた。

従来、健康は生物医学的モデルで説明されるような単一病因に規定されていると捉えられることが一般的であったが、報告書の公表以降、社会環境も含む多くの要因が健康に影響を与えていると考えられるようになった。

例えば、1978年WHOが提唱したプライマリヘルスケアに関するアルマ・アタ宣言や、1986年のWHOによるヘルスプロモーションに関するオタワ憲章は、ラロンド報告に触発された包括的な健康観を基調としている。

この報告によって、保健政策では健康の維持向上には狭義のヘルスケアの範囲を超えた取組みが必要であると強調されるようになった。(湯浅資之)
用語 生活習慣病
概要 (英語訳:Noncommunicable Diseases;NCDs /Chronic Diseases/Lifestyle-related Disease)

脳卒中や癌、心疾患、糖尿病、高血圧症、動脈硬化など、その発症や進行に、食生活や運動、喫煙、飲酒などの生活習慣が深く関係するとされる疾病の総称。従来は、加齢に伴って増加することから「成人病」と呼ばれてきたが、発症時期が低年齢化していることや、予防のためには生活習慣が重要であるとする立場から、1997年、厚生省(当時)は新しい名称を導入した。これに伴い、疾病の早期発見・早期治療といった二次予防中心の対策から、生活習慣の見直しや支援的な環境づくりによる発症の予防といった一次予防中心の対策が重視されるようになった。

国際的には非感染性疾患(Noncommunicable Diseases;NCDs)、慢性疾患(Chronic Diseases)と呼ばれ、WHOは、全死亡のうち270万は果物と野菜の摂取不足、190万は運動不足に起因しているとして、2004年に「食事、身体活動、健康に関する世界戦略Global Strategy on Diet, Physical Activity and Health (DPAS).」を採択した。
加盟国政府や国際機関、市民集団、NGO、民間セクターなどの関係者に、健康的な食事や身体活動などのライフスタイルを促進するための国家政策、計画、プログラムの実施を促進するよう呼びかけ、それらの実施・運営支援のために、データベースの整備や、モニタリング・評価の枠組み、身体活動を増やすポピュレーションベースアプローチのガイド、適切な野菜・果物の生産・消費のためのより効果的な介入、職場における非感染性疾患対策などに関する資料を提供している。先進国の問題と思われがちであるが、糖尿病による死亡の80%は、中・低所得国で起こっており、途上国にとっても深刻な問題である。(西田美佐)