理事長あいさつ
一般社団法人 日本国際保健医療学会 理事長 琉球大学・保健学研究科・研究科長/教授 小林 潤 |
令和5年1月1日より、神馬征峰前理事長のあとをついで日本国際保健医療学会理事長に就任いたしました。皆様のお知恵を借りながら、ポストコロナ時代のなかで前進していく、目に見える活気のある学会になるよう努力していきたいと考えております。
学会の英語名は“Japanese Association for International Health” から“Japanese Association for Global Health”へ改められました。このことは、単に時代にあわせて改名したこと以上のことと考えています。国外からみたときにグローバルヘルスを探求するアカデミアの代表的集団と見られることになるといえます。これらの外から目に刺激を受けつつ、且つ所属することが魅力的な集団へと発展させるチャンスと考えています。
20年ほど前に、イギリス王立熱帯医学会100周年記念大会で、国際保健医療学会前理事長中村教授、熱帯医学会前理事長狩野教授らとジャパンセッションに登壇させていただいたことがありました。今考えるとその時代には、我々はイギリスやアメリカの国際保健にいかに近づくかを考えていたと思います。私のプレゼンテーションは、それなりのインパクトを得られたと自負はしていますが、寄せられた質問は「あなたの研究や事業は侍精神から来ているのか」といったものでした。イギリスやアメリカからみたら、日本の経験を世界戦略とアジア各国に融合させたという学問の成果よりも、その背景にある日本特有の精神に興味が持たれたようです。
ここ10年でその環境は大きく変化していることを感じています。韓国にグローバルヘルス学会が誕生して以来、この学会はアジアのなかで重要なアカデミア集団となっています。さらに近年では、台湾、シンガポール、タイ等の国々が、グローバルヘルス校をつくり、そのネットワークが学会設立へと動いています。まさに2国間援助の上になりたっていたInternational Healthの時代から、多くの国々がグローバルヘルスを学び、研究し、発信する時代になっています。今後日本国際保健医療学会は、日本がグローバルヘルスとして何を考え発信しているのかとして発信の内容を海外からは見られることになるでしょう。
神馬前理事長からの申し送りの一つで、本学会の強みでありさらにそれを再興させるべき事項がありました。それは実務家と研究家の両方が集う場であることです。幸いにして、日本を代表するNGOからも本学会の理事が選出されています。アカデミアとは、大学や研究機関に属する研究者の集団と狭義ではとらえられることが多いでしょう。しかしながら、アカデミアに所属するにおいて個人の所属が研究機関である必要は実はありません。例えば、日本料理のアカデミアとして挙げられる多くの人は、料理専門学校に所属しているわけではなく日本料理を真に追及している料理人であるわけです。そこで最も評価される成果として論文が常にある訳でも授業料をとって教えた学生の数でもありません。真に追及している人、追及したいと思う人が認め合って自由に集う場所に再びなることかと考えています。さらに研究者と実務家が集う場所を利用することで、強力な発信力となるとも言えます。
日本料理は伝統を大事にしながらも、且つ時代にあわせて常に新しいものになっているからこそ世界無形文化遺産にまでなりえた。これからは日本のグローバルヘルスにも同様に、過去の歴史を振り返り、且つ時代にあわせて常に新しいものをつくっていくことが求められ、そこに日本ならではのものを造ることが必要になるでしょう。多くの学会で若い人が少なくなったという声が聞かれますが、国際保健医療学会も例外ではありません。一方若い人がグローバルヘルスに興味がない、学会というものが必要なくなったということではないのではないでしょうか。若い会員の人が主体となれる場所とはどういうものなのか、どうして作っていくべきか早速検討を有志で始めています。もしこれを読んで思うことがあれば、是非気軽に声をかけてください。どんなに広角なカメラを用いても一つでは限界があることは強く認識しています。
ポストコロナの前進すべき時代は何なのか常に考えながら、内部の多様性を重視し、海外の仲間と対等な立場での国際的連携を重視することによって、学会が真剣に話し合える楽しい魅力的場所になることを実現していきたいと思います。是非、皆様の御協力を宜しくお願い申し上げます。
令和5年1月