国際保健用語集
用語 | 橋本イニシアチブ |
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概要 |
(英語訳 : Hashimoto Initiative) 1997年、デンバーで開催されたG8サミットで、橋本龍太郎首相(当時)は寄生虫症の国際的対策の重要性を訴え、G8各国が協力分担して当たるべきことを強調した。 翌1998年のバーミンガムサミットでは、橋本首相のこの提言が「感染症及び寄生虫症に関する相互協力を強化し、これからの分野における世界保健機関(WHO)の努力を支援すること」とコミュニケに盛り込まれ、世界は21世紀に向けた国際寄生虫戦略を、国際政治上の最も高いコミットを受けて展開してゆくこととなった。この提唱を「橋本イニシアチブ」と呼ぶ。 日本は様々な社会的・経済的困難を克服し、寄生虫症の流行を制圧した経験を持っているので、この経験を生かすことで、わが国がG8各国の中にあって国際寄生虫戦略でリーダーシップを発揮してゆくことを橋本首相は切望された。現在まで、独立行政法人国際協力機構(JICA)を通した「橋本イニシアチブ」としては、アジアに1カ所(タイ・マヒドン大学)、アフリカに2カ所(ケニア・ケニア中央医学研究所、ガーナ・野口記念研究所)の寄生虫対策の拠点「Centres of International Parasite Control: CIPACs」が開設され、人材開発プロジェクトを中心とした寄生虫対策が拠点周辺諸国を含めて展開されている。 「国際寄生虫対策ワークショップ2004」では、日本政府は「橋本イニシアチブ」の一層の充実をめざし、厚生労働省、外務省、文部科学省、JICA、日本寄生虫学会等を中心とした専門家会合を続け、WHO、World Bank等と情報交換を行いながら、さらなる効果的な国際寄生虫対策の実施に向けて、他のドナー機関との連携を強化していくことが重要であると確認された。 |
用語 | 母乳栄養 |
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概要 |
(英語訳:Breast Feeding) |
用語 | 母子保健 |
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概要 |
(英語訳:Maternal and Child Health) |
用語 | 母子健康手帳 |
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概要 |
(英語訳:Maternal and Child Health Handbook) 日本では、1942年に作成された「妊産婦手帳」をもとに、1948年に「母子手帳」が作られ、現在では「母子健康手帳」に発展した。妊娠、出産、子どもの健康の記録が一冊にまとめられ、健康教育教材としての種々のメッセージを含み、両親の手元で保管される母子健康手帳は、妊産婦ケアと新生児・小児ケアをつなぐ有用なツールとして国際的に注目を集めている。 1994年に国際協力機構(JICA)の協力によりインドネシアにてイラストや図を豊富に盛り込んだインドネシア版母子健康手帳が開発され、その後インドネシア全土に普及した。現在、母子健康手帳が使用されている国はタイ、韓国、東ティモール、ニジェール、セネガル、チュニジアなどがあげられ、プロジェクトとして開発されている国や地域は、ベトナム、バングラデシュ、ラオス、カンボジア、パレスチナ、ドミニカ共和国、ユタ州(米国)など世界に広がっている。 母子健康手帳は個別に実施されてきた母子保健サービスを統合する有力な家庭用記録媒体(home-based record)であるが、単に配布するだけでは不十分である。母子保健医療関係者が母子健康手帳を活用して、健康教育や保健医療サービスを実施することにより大きな効果を得ることができる。(中村安秀) |
用語 | 母性保護 |
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概要 |
(英語訳:Maternity protection) |
用語 | 気候変動に関する政府間パネル |
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概要 |
(英語訳:IPCC, Intergovernmental Panel on Climate Change) |
用語 | 汎米保健機構/WHOアメリカ事務局 |
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概要 |
(英語訳:PAHO, Pan American Health Organization) PAHO(汎米保健機構)は、WHO(世界保健機構)のアメリカ地域事務局であり、南米アメリカ大陸の住民の健康と生活状況の改善を目的に活動を実施している。その原則は、限られた資源のもと、効率的に公共の保健医療サービスを住民に届ける事であり、近年、再興・新興感染症のみならず、生活習慣病や癌疾患への対策にも目を向けるようになっている。歴史的には、1902年にアメリカ大陸におけるペストなどの感染症対策を地域として取る事を目的に11カ国が集まり、The Pan American Sanitary Bureau (PASB)として設立された。WHO本部より40年以上の長い歴史を持っており、他の地域事務所と違い、WPRO、AFRO、EMRO、CEAROなどように地域事務所という名称を用いていない。 WHO本部とは別の独自の活動も多く、特に災害対策分野での対策、活動は秀でており、対策の為の様々なマニュアルを発行している。また、会議で主に用いられる言語はスペイン語である。 PAHO本部は、アメリカ合衆国のワシントンDCにあり、27カ国に国事務所(Country Office)をもち、多くの国において、第二保健省とも称されることもあり、国の保健政策、またその実施に大きな影響を持っている。(仲佐保) |
用語 | 沖縄感染症対策イニシアティブ |
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概要 |
(英語訳 :Okinawa Infectious Diseases Initiative) 2000年7月の九州・沖縄サミットにおいて、日本は議長国として開発途上国の感染症問題を主要議題の一つとして取り上げ、日本の政府開発援助(ODA)で2000年度から2004年度までの5年間に総額30億ドルを目途とする包括的な感染症対策支援を行う「沖縄感染症対策イニシアティブ(IDI)」を発表した。このIDIにおける感染症対策の主な方針は、1)途上国の主体的取り組み(オーナーシップ)の強化、2)人材育成、3)市民社会組織、援助国、国際機関との連携、4)南南協力、5)コミュニティ・レベルでの公衆衛生の推進、の5項目である。主な支援内容としては、1)HIV/AIDS(若年層やハイリスク・グループへの予防啓発活動、自発的検査とカウンセリングの普及、検査・診断技術の強化、エイズ遺児のケア)、2)結核(人材育成、DOTS治療の推進)、3)マラリア・寄生虫(薬剤含浸蚊帳の使用促進、ギニア・ワーム根絶支援、国際寄生虫対策(橋本イニシアチブ)センター(タイ・ガーナ・ケニア)での人材育成)、4)ポリオ(ワクチン接種などによるポリオ根絶支援)、5)疾病を超えた保健医療体制の整備(安全な水の供給、プライマリーヘルスケアの充実など)、の5項目である。日本がこの感染症問題への取り組みの重要性を国際社会に訴えたことが契機となって、広く国際社会一般の関心が喚起され、2001年の国連エイズ特別総会やジェノバサミットでの議論を経て、2002年には、「世界エイズ・結核・マラリア対策基金:The Global Fund to fight AIDS, Tuberculosis and Malaria」の設立に至った。(狩野繁之) |
用語 | 渡航医学 |
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概要 |
(英語訳:Travel Medicine) 渡航医学とは「国際間の人の移動にともなう健康問題や疾病を扱う医学」で、旅行医学とも呼ばれている。渡航医学の対象者には、自国から外国へ向かう「アウトバウンド渡航者」と、外国から自国を訪問する「インバウンド渡航者」の2つがある。日本を中心に考えれば、アウトバウンドは海外旅行者、海外出張者、駐在員、留学生、インバウンドは訪日外国人や在日外国人という位置づけになる。欧米諸国では渡航医学の専門医療施設であるトラベルクリニックが数多く設置されているが、日本でも2000年代より、経済のグローバル化や海外旅行ブームとともに、その数が増えつつある。 渡航医学があつかう健康問題としては、自然環境の変化による疾病(気候による疾病、航空機内の疾病、時差症候群、高山病など)や衛生環境の変化による感染症がその代表的なものである。さらに長期滞在者にとっては、生活習慣病やメンタルヘルス不全も大きな健康問題となる。また、滞在先での医療機関の受診や医療費の支払いも重要な課題である。 トラベルクリニックでは、こうした健康問題を未然に防ぐ予防対策に重点がおかれる。出国前には健康指導や現地医療情報の提供を行い、必要に応じて健康診断を実施する。ワクチン接種も感染症予防のために重要な対策である。また、帰国後の有症者への診療もトラベルクリニックの業務に含まれる。 国内のトラベルクリニックの所在情報は、検疫所や日本渡航医学会のホームページから検索することができる。(濱田篤郎) |
用語 | 災害時迅速評価 |
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概要 |
(英訳 Rapid Assessment、もしくはRapid Needs Assessment) 災害時のニーズ・アセスメントは、災害対応を成功させるために不可欠である。その目的は、第一に対応の優先順位の決定と計画策定のためであり、第二に、外部の援助者に対して災害の程度を知らせる目的もある。迅速評価では、災害状況をレポートし、初期対応として最適なものを提言する。その情報としては、心象、具体的な数、事実が含まれ、時間や場所を特定でき、特定の目的に対して意味があるときに、有益な情報となる。緊急対応の優先順位としては、まず災害を被った生命を助けることであり、次いで、生命維持のために必要な飲み水、衛生、十分な食料、適切な医療援助、シェルター(住居や衣服)、燃料などが挙げられる。また、肉体的暴力や攻撃などから特に難民や国内避難民を含む被災民を守り、さらには、心理的、社会的なストレスから被災者を守らなければならない。(明石秀親) |
用語 | 熱帯病研究訓練特別計画 |
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概要 |
(英語訳:TDR: The Special Programme for Research and Training in Tropical Diseases) TDRは、世界保健機関(WHO)の組織として、国連児童基金(UNICEF)、国連開発計画(UNDP)、世界銀行(WB)が共同スポンサーとなって、開発途上国に蔓延するマラリア、住血吸虫症、フィラリア症(リンパ系フィラリア症、オンコセルカ症)、ハンセン氏病、トリパノソーマ症及びリーシュマニア症の6疾患に焦点を合わせ、研究開発や教育訓練を行う事業として1975年に設立された。近年では、TDRの研究開発は、貧しい人びとの居住する地域や国家の公衆衛生に関する制度を総合的により広く検討し、住血吸虫症、結核、デング熱なども含めた、いわゆる「顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases:NTDs)」の予防・診断・治療に関する事業を行っている。一方、TDRは自らの研究施設や研究者を持たないので、各国の保健省をはじめとする政府機関、公的な研究施設や大学研究機関、製薬企業やNGOなどの官民のパートナーシップを繋ぐネットワークオーガナイザーとしての役割が主要業務といえる。(狩野繁之) |
用語 | 狂犬病 |
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概要 |
(英語訳:Rabies) 狂犬病ウイルスはイヌ以外にも多数の野生動物が保有し、これらによる咬傷、稀には噴霧気道感染により感染する。全世界では、毎年数万人が狂犬病によって死亡しているといわれ、アジア地域での発生が最も多い。 わが国では2006年、30数年ぶりに2名の患者が報告されたが、フィリピンでの受傷であった。感染から発症までの潜伏期間は個々の症例で異なるが、一般的には1~2カ月である。発熱、頭痛、倦怠感、筋痛などの感冒様症状ではじまり、咬傷部位の疼痛やその周辺の知覚異常、筋の攣縮を伴う。中枢神経症状は運動過多、興奮、不安狂躁から始まり、錯乱、幻覚、攻撃性、恐水発作等の筋痙攣を呈し、最終的には昏睡状態から呼吸停止で死にいたる。狂犬病は一度発症すれば、致死率はほぼ100%である。 狂犬病が疑われるイヌ、ネコおよび野生動物にかまれたり、ひっかかれたりした場合、まず傷口を石鹸と水でよく洗い流し、医療機関を受診する。必要に応じて、狂犬病ワクチン(曝露後免疫)・抗狂犬病ガンマグロブリンを投与する。 狂犬病は一旦発症すれば特異的治療法が無いので、できるだけ早期にワクチンとガンマグロブリンで対処する必要があるが、国内では抗狂犬病免疫グロブリン製剤は入手できない。予防目的でのワクチン接種(曝露前免疫)も有効である。(中野貴司) |
用語 | 環境社会学 |
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概要 |
(英語訳 : Environmental Sociology) |
用語 | 生活習慣病 |
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概要 |
(英語訳:Noncommunicable Diseases;NCDs /Chronic Diseases/Lifestyle-related Disease) 脳卒中や癌、心疾患、糖尿病、高血圧症、動脈硬化など、その発症や進行に、食生活や運動、喫煙、飲酒などの生活習慣が深く関係するとされる疾病の総称。従来は、加齢に伴って増加することから「成人病」と呼ばれてきたが、発症時期が低年齢化していることや、予防のためには生活習慣が重要であるとする立場から、1997年、厚生省(当時)は新しい名称を導入した。これに伴い、疾病の早期発見・早期治療といった二次予防中心の対策から、生活習慣の見直しや支援的な環境づくりによる発症の予防といった一次予防中心の対策が重視されるようになった。 国際的には非感染性疾患(Noncommunicable Diseases;NCDs)、慢性疾患(Chronic Diseases)と呼ばれ、WHOは、全死亡のうち270万は果物と野菜の摂取不足、190万は運動不足に起因しているとして、2004年に「食事、身体活動、健康に関する世界戦略Global Strategy on Diet, Physical Activity and Health (DPAS).」を採択した。 加盟国政府や国際機関、市民集団、NGO、民間セクターなどの関係者に、健康的な食事や身体活動などのライフスタイルを促進するための国家政策、計画、プログラムの実施を促進するよう呼びかけ、それらの実施・運営支援のために、データベースの整備や、モニタリング・評価の枠組み、身体活動を増やすポピュレーションベースアプローチのガイド、適切な野菜・果物の生産・消費のためのより効果的な介入、職場における非感染性疾患対策などに関する資料を提供している。先進国の問題と思われがちであるが、糖尿病による死亡の80%は、中・低所得国で起こっており、途上国にとっても深刻な問題である。(西田美佐) |
用語 | 産前健診・妊婦健診 |
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概要 |
(英語訳:ANC, Antenatal Care or Prenatal Care) 妊婦およびその胎児の健康状態や社会経済状況のスクリーニングとケアを行うこと。 一般的なスクリーニング項目は、体重、血圧、腹部(子宮)の計測、胎児心音の聴取、尿検査等である。医師、助産師、および産前健診に必要な技術をもった保健医療職員が妊娠・出産に伴うリスク因子を査定し、リスクの程度に応じた妊娠期の生活指導や出産場所を検討する。途上国では特に、破傷風の予防接種、貧血の予防・治療、HIV 陽性者へのART(抗レトロウィルス療法)、マラリアの予防・治療などの機会として重要である。 その他、栄養、母乳育児、生活習慣や妊娠中の危険な徴候についての指導も行う。産後ケア(Postnatal Care: PNC)とともに周産期死亡率の低減および肯定的な出産体験に不可欠とされ、WHOは妊娠中に最低 8回の産前健診を推奨している。産前健診の実施率(Antenatal Care Coverage: ANC Coverage: 15~49 歳の女性で、妊娠中に少なくとも 1 回、助産専門技能者によるケアを受けた女性の比率)は、妊娠期のヘルスケアへのアクセスと利用に関する指標の1つであり、国・地域で格差があるだけではなく、同国内の居住地や世帯資産によっても大きな格差がある。(小黒道子) |
用語 | 産科ろう孔 |
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概要 | →フィスチュラ |
用語 | 産科救急ケア |
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概要 |
(英語訳 : Emergency Obstetrics Care) 妊産婦死亡を減らすために熟練した専門技能者(Skilled Birth Attendant:SBA)による分娩介助が必要であり、その熟練した専門技能者の分娩介助の下で緊急時に必要とされるケアを緊急産科ケア(Emergency Obstetric Care:EmOC)という。また、分娩周辺期のケアは新生児死亡にも大きく関わることから、緊急産科新生児ケア(Emergency Obstetric and Newborn Care: EmONC)ということが多い。 緊急産科新生児ケアは基礎的ケア、包括的ケアとレベルによって分けられている。 1)基礎的緊急産科新生児ケア(Basic EmONC) 抗生剤・子宮収縮剤・抗痙攣剤の使用、胎盤の用手摘出、流産等の子宮内遺残物の除去、吸引分娩等の器械的分娩補助、基礎的な新生児蘇生 2)包括的緊急産科新生児ケア(Comprehensive EmONC) 帝王切開、安全な輸血、仮死児の蘇生や低出生体重児のケア 人口50万人につき緊急産科新生児ケアを提供できる施設が最低5施設あること(うち1施設は包括的緊急産科新生児ケアが提供できる)、すべての女性が直接的産科合併症のケアを受けられること、全分娩に占める帝王切開率が5-15%であること、直接的産科合併症による死亡が施設で1%未満であること、が指標として最低限目標とすべきレベルとされている。(松本安代) |
用語 | 産間調節 |
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概要 |
(英語訳: Birth Spacing) 出産間隔が短いと母体への負担が大きく、また十分な授乳期間や育児時間が確保できないことで子供への影響も大きい。特に産後1年以内の妊娠は、母児ともにリスクが高く、早産、低出生体重、胎内発育不全などのリスクが高くなると言われている。出産間隔を24か月以上あけると5歳未満児死亡が13%、36か月あけると25%減少するという。このため出産間隔をあけることが推奨され、これをbirth spacingと呼ぶ。 家族計画(Family Planning)が家族のサイズ、すなわち子どもの数を調整する志向を持つのに対し、産間調節は出産間隔をあけるという点を強調する。子供の人数を制限するという考え方が好まれない文化では、birth spacingという表現を選択的に使う場合もある。しかし、産間調節は家族計画の一部であり、家族計画を達成する手段である。WHOではPostpartum Family Planning (PPFP)の重要性を強調しており、産後に次の出産までの間隔をあけるよう指導することを強調しているが、PPHPにおいても産間調節という概念は重要である。(柳澤理子) |
用語 | 疾病負荷 |
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概要 |
(英語訳 : Global Disease Burden) 世界中で、疾病により失われた生命や生活の質の総合計を「疾病負荷(GBD: Global Burden of Diseases)」という。 傷害や生活の質の度合いを考慮した健康指標として「健康寿命」、「質を考慮した生存年数(QALY: Quality -Adjusted Life Years)」、「失われた生活年数(YPLL: Years of Productive (or Potential) Life Lost)」、「障害と共に生活する年数(YLDs: Years Lived with Disability)」などの指標が使われている。 QALYを使った事例として、ガンによる生存年数が3年であった場合、後遺症が残れば効用値(重み付け)である0.5を掛けて3×0.5=1.5年と計算する。QALY等の効用により重み付けされた健康指標は費用効果分析などに活用される。 |
用語 | 直接服薬確認短期化学療法 |
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概要 |
(英語訳 : DOTS, Directly Observed Treatment, Short Course) DOTSは“Directly Observed Treatment, Short Course”の略称で、1994年にWHO(世界保健機関)が作成した「効果的な結核対策のための枠組み」(Framework for Effective Tuberculosis Control)に提示された結核対策の戦略であり、以下5つの政策要素から構成されている。 (1)全国を網羅した既存の制度の中での結核対策を強化するため、政府が強力に取り組む。 (2)有症状受診者に対する喀痰塗抹検査により結核患者を発見する。 (3)標準短期化学療法による6~8ヶ月間の適切な治療を服薬確認しつつ提供する。 (4)薬剤安定供給システムを確立する。 (5)地域における結核対策の実施状況をモニタリングし、定期的に評価するために、結核患者台帳を整備し、それに基づく患者の発見と治療結果のまとめとを報告するシステムを確立する。(大角晃弘) |
用語 | 直接監視下治療 |
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概要 | →直接服薬確認短期化学療法 |
用語 | 短期直接監視下治療 |
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概要 | →直接服薬確認短期化学療法 |
用語 | 米国国際開発庁 |
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概要 |
(英語訳: USAID, United States Agency for International Development) 米国政府において、世界の貧困の終焉、強靭かつ民主的な社会の実現を理念として、ジョン.F. ケネディ大統領時代の1961年に設置された機関。本部はワシントンD.C。 米国の利益の拡大と開発途上国における生活の向上という2つの目的を持つ米国の対外支援政策の実施を行い、100か国以上に支援を提供している。USAIDの事業実績は約131億ドル(2017年)で、保健に対する支出はHIV/エイズ対策を中心に19.4億ドル(約15%)を占めている。 支援分野は、経済成長、民主化と良い統治、人権、グローバルヘルス、食糧安全保障と農業、持続的な環境、教育、紛争予防と復興、人道支援と多岐にわたっている。そのうち、グローバルヘルスに関しては、家族計画、母子保健、マラリア対策や栄養に関する「母と子の死亡の予防」、米国大統領緊急エイズ救援計画(U.S. President's Emergency Plan for AIDS Relief: PEPFAR)の主要実施機関として「HIV/エイズ蔓延のコントロール」、結核対策や顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Disease: NTD)に新興感染症対策を含めた「感染症への対策」の3つの優先戦略事項を掲げている。(平岡久和) |
用語 | 米国疾病管理予防センター |
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概要 |
(英語訳:CDC, Centers for Disease Control and Prevention) 米国疾病管理予防センターは、米国民の健康改善のため、疾患の予防と管理、環境衛生、健康増進、健康教育活動を行う米国の政府機関。米国保健社会福祉省(Department of Health and Human Services)の下部組織にあたる。組織は, 長官局(Office of the Director)の下、州・部族・地方・地域支援局(Office for State, Tribal, Local, and Territorial Support), 公衆衛生に関する科学的サービス局(Office of Public Health Scientific Services), 非感染症・外傷・環境衛生局(Office of Noncommunicable Diseases, Injury, and Environmental Health), 感染症局(Office of Infectious Diseases)から構成される。長官は、Robert R. Redfield博士(2018年3月27日現在)(中島一敏) |
用語 | 粗死亡率 |
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概要 |
(英語訳 :CMR, Crude Mortality Rate) |
用語 | 精神保健 |
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概要 |
(英語訳:Mental Health and Well-being) WHO(世界保健機関)は、精神保健を「個人が、それぞれの可能性を実現し、日々の通常のストレスに対処でき、生産的かつ有意義に働くことができ、自身のコミュニティに貢献することができるようなウェルビーイングの状態」としている。WHOの健康の定義(1946)や国際人権規約が定める健康権(1966)にも精神保健が含まれている。国際行動計画である「包括的メンタルヘルスアクションプラン2013-2020」(WHO、2013)では、国際疾病分類ICD-10の「精神および行動の障害」を精神疾患と捉え、うつ病、双極性感情障害、統合失調症、不安障害、認知症、物質使用障害、知的障害、自閉症を含む児童期および青年期に通常発症する発達および行動の障害、自殺やてんかん等を含む。WHOは、精神疾患の生涯有病率を4人に1人、精神保健への$1の投資が$4の利益を生むとしている。青年女子の死因1位が自殺であること等を踏まえ、国連「持続可能な開発目標(SDGs)」(2015)では 、目標3に「精神保健及び福祉」の促進(ターゲット3.4)及び薬物・アルコール等「物質乱用の防止・治療」の強化(3.5)が含まれ、国際の優先事項となった。国連障害者権利条約(2006)にも、身体的及び感覚的機能障害と共に精神的及び知的機能障害が含まれている。今後は、従来の医学モデルに代わる障害者権利条約の社会モデルに基づき、地域における分野横断的で統合的なアプローチによる、精神障害のある人々の人権保護・促進及びウェルビーイングの向上が急務である。(井筒節・堤敦朗) |
用語 | 経口補液療法 |
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概要 |
(英語訳 : ORT, Oral Rehydration Therapy) 経口補液療法とは、下痢症により引き起こされる脱水を治療する手段である。 歴史は1940年代までさかのぼり、大量の水様性下痢により急速に脱水に陥るコレラに対する治療として最初に用いられた。途上国では、病院の設備が十分でなかったり医薬品が入手できないという事情により経静脈輸液治療が実施できない場合は多い。 さらには、手技の未熟さや経験不足のため、急速な輸液による心不全や静脈ルートからの感染など経静脈輸液に伴うリスクが大きい。このような現場で多くの子どもたちを救ってきたのは、水、糖分、塩分を一定の割合で溶かした経口的に補給される溶液であった。1975年にはWHOとUNICEFが統一した組成の経口補液療法用の糖塩分溶液(Oral Rehydration Salts, Oral Rehydration Solution, ORS)を奨励するようになった。その後、病態に応じたナトリウム濃度など組成成分の調整、穀物をベースとしたORT、栄養価や吸湿性についても継続して検討されている。また、ORTは下痢症の治療であるとともに「飲食」という日常の生活にきわめて密着しているということを忘れてはならない。 住民たちに浸透し普及するためには、現地における受容性、食生活や離乳食習慣に配慮し、文化人類学的な側面を検討する必要がある。 |
用語 | 経口補液療法・経口補水薬 |
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概要 |
(英語訳:ORT・ORS , Oral Rehydration Therapy・Oral Rehydration Salts) 経口補液療法(ORT)とは、下痢症により引き起こされた脱水を治療する手段である。歴史は1940年代までさかのぼり、大量の水様性下痢により急速に脱水に陥るコレラの治療として用いられたのがその始まりである。途上国では、病院の設備が不十分で医薬品も乏しいという事情により、経静脈輸液治療が実施できない場合が多い。さらには、手技の未熟さや経験不足のため、急速な輸液による心不全や静脈ルートからの感染など経静脈輸液に伴うリスクが大きい。このような現場で多くの子どもたちを救ってきたのは、糖分、塩分を一定の割合で水に溶かして作成した溶液を経口的に補給する治療法であった。1975年には、WHOとUNICEF?が統一した組成の経口補水薬(ORS)を奨励するようになった。その後、病態に応じたナトリウム濃度など組成成分の調整、穀物をベースとしたORT 、栄養価や吸湿性についても継続して検討されている。また、ORTは下痢症の治療であるとともに「飲食」という日常の生活にきわめて密着しているということを忘れてはならない。住民たちに浸透し普及するためには、現地における受容性、食生活や離乳食習慣に配慮し、文化人類学的な側面を検討する必要がある。(中野貴司) |
用語 | 経済協力開発機構 |
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概要 |
(英語訳 : Organization for Economic Cooperation and Development) 欧州経済復興促進のため1948年に発足した欧州経済協力機構(OEEC)が改組され、61年9月、経済協力開発機構(OECD)として発足。事務局はフランスの首都パリ。OECDの目的は、経済成長、開発途上国援助、貿易の拡大にあり、目的達成のために加盟国相互間の情報交換、コンサルテーション、共同研究と協力を行う。近年雇用問題、多国籍間の投資協定の策定、ウルグアイ・ラウンド後の貿易問題、規制緩和などに取り組んでいる。2003年時点の加盟国は30カ国(ほかに準加盟国としてユーゴスラビア)。当初は先進国クラブとよばれたが、メキシコ、韓国、東欧諸国の加盟により新たな特色を打ち出すべく模索中である。 最高機関は閣僚理事会と常駐代表会議から成る理事会。理事会は、14カ国から成る執行委員会(この内アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、日本、カナダの7カ国は常任)を選出、全加盟国が国際経済の重要問題を審議する新執行委員会を設置する。下部機構に経済政策委員会、貿易開発委員会、開発援助委員会(DAC)の3大委員会をはじめ、合計35の委員会がおかれている。 |
用語 | 経済破綻効果 |
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概要 |
(英語訳:Catastrophic Effectまたは、Catastrophic Health Expenditure) |
用語 | 経済開発協力機構 |
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概要 |
(英語訳:OECD, Organization for Economic Co-operation and Development) 第二次大戦後の欧州各国の経済的混乱を救済するための欧州復興計画を契機として、1948年に発足した欧州経済協力機構が前身にあたる。その後、1961年に米国、カナダが加わり、新たに経済協力開発機構が発足した。我が国は1964年に加盟。本部はパリに置かれ、1)経済成長、2)貿易自由化、3)途上国支援(これを「OECDの三大目的」という)に貢献することを目的としている。「開発援助委員会」は開発援助を促進するとともに、援助の効果向上を目的とする、経済協力開発機構の委員会である。(山本太郎) |
用語 | 結核 |
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概要 |
(英語訳:TB, Tuberculosis) |
用語 | 緊急産科ケア |
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概要 | →産科救急ケア |
用語 | 職業上の安全のおよび健康を促進するための枠組みに関する条約 |
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概要 |
(英語訳 : Promotional Framework for Occupational Safety and Health Convention) ILO(国際労働機関)の第187号条約として2006年に採択された。本条約の目的は、すべての働く人々の健康と安全の向上のために安全健康予防文化の確立を推進することである。そのために、職場における健康および安全リスク評価活動を推進し、見つかったリスクに対応する。また、政府は労働者、経営者代表と協力して5年程度の中期的な国家労働安全衛生計画を策定し実施する。その過程において、国内の労働安全衛生の現状を分析し、優先行動課題を決定して到達目標を設定する。 アジア諸国では本条約を参照しながら自国の働く人々 の健康と安全対策を促進している。ベトナム、ラオス、インドネシア、タイ、中国、モンゴル、シンガポールなどが国家労働安全衛生計画を策定し、実施を進めている。 各国はそれぞれの国家計画の枠組みの中で、労働安全衛生法の強化と効果的な実施の他に、中小零細企業、家内労働、農業、鉱山や建設業等のリスクの高い職場の対策強化、外国人労働者の労働安全衛生保護拡大等の重要課題にも取り組んでいる。 この条約により、労働安全衛生マネジメントシステムに基づいた体制と実施の継続的な改善、ならびに労働安全衛生が国としての重要課題に位置づけられることが期待されている。(和田耕治) |
用語 | 自殺 |
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概要 |
(英語訳:Suicide) |
用語 | 若年妊娠 |
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概要 |
(英語訳:Adolescent pregnancy or teenage pregnancy) |
用語 | 英国国際開発省 |
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概要 |
(英語訳:DFID, Department for International Development) 英国の開発協力を中心的に担う組織として、1997年に設立され、アフリカ、アジア及び中東に対する支援を中心とした援助機関。英国の全ODA(2017年)139.3億ポンドであるが(GNI比0.7%を実現している)、その72.5%がDFIDを通じて供与されている。 優先課題(Strategic Objectives)は、「世界的平和・安全・ガバナンスの強化」、「危機に対する強靭性や対応力の強化」、「世界的繁栄の推進」、「極度の貧困への対応と最も脆弱な人びとへの支援」、「英国援助の資金に見合う価値と透明性の向上」の5つを掲げている。 英国ODAは62.4%が二国間協力(2017年)で、DFIDを通じた二国間協力のうち主要な協力相手先はアフリカ(25.9億ポンド:二国間協力の58.6%)であり、次いでアジア(15.7億ポンド:35.5%)と大部分を占めている。 保健分野は、2016年の二国間協力では人道支援、政府・市民社会についで、10.4億ポンド(12.2%)と3番目に大きい支援分野となっている。(平岡久和) |
用語 | 薬剤耐性 |
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概要 |
(英語訳:AMR, Antimicrobial Resistance) |
用語 | 行動変容のためのコミュニケーション |
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概要 |
(英語訳:IEC, Information, Education, and Communication: IEC BCC, Behavior Change Communication) 情報・教育・コミュニケーション(Information, education, and communication:IEC)とは、 サービス利用者に対して特定の情報を伝達する方法である。サービス利用者が理解を深めて行動変化することを目指して、サービス提供側が活動を展開するということに焦点を当てている。例えば妊婦検診を広めることを目的とする事業では、情報の送り手である保健省が、受け手である妊婦に対して、TVやラジオでの宣伝や街頭ポスター、保健センターなどでの指導など、様々なチャンネルを通じて、妊婦検診の日時/場所といった情報を伝えると同時に、なぜ妊婦検診が必要なのかについて理解を深めさせ、実際に妊婦検診へ行くように働きかけることを意味する。 一方、行動変容のためのコミュニケーション(Behavior change communication:BCC)では、サービス利用者が、長い間培ってきた行動や生活パターンを、より望ましいものに変えるということに焦点を当てている。例えば、コンドームの使用や禁煙などである。行動変容を促すには、知識のみならず、行動変容がその人に望ましい成果をもたらせるのだと気づかせること、さらには、その人自身が行動変容できるのだという自信を持たせることが重要とされている。具体的例として、カウンセリング、メディアキャンペーン、法制度の整備などがある。BCCとIECは類似点も多いが、厳密には異なる点もある。そのため、IEC/BCCと並列標記される場合と、別々に標記される場合とがある。(和田知代) |
用語 | 行動科学 |
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概要 |
(英語訳 : Behavioral science) 第二次世界大戦後のシカゴ大学の科学者が、自然科学と社会科学を統合した見方から行動を捉えようとした際に用いられた名称。人間の個人的・集団的行動の一般法則を客観的な観察や調査によって実証しようとする学問であり、心理学、社会学、人類学を中核として、精神医学、コミュニケーション論、情報理論などの領域を含みながら、学際的に発展してきた。 国際保健医療の分野に関連が深いのは「応用行動科学(applied behavioral science)」であろう。人間の対人行動に関する諸理論(対人関係、対人的コミュニケーション、対人的影響過程、集団内行動、リーダーシップ、グループ・ダイナミックス、組織行動など)を応用して、現場で起こっている人間関係的側面の諸問題に働きかけていくものである。アプローチとしてはアクションリサーチのサイクルが用いられる。アクションリサーチの父とされるK.Lewinは、人間関係の改善のための手法としてワークショップ形式で行われるトレーニング(training)を重視した。K.Lewinのこの発想は、彼の弟子たちによって設立された米国NTL Institute for Applied Behavioral Scienceにて、人間関係トレーニング(Human Relations Training、正式名称:ラボラトリー方式の体験学習)として、また、民主的でヒューマニスティックな組織づくりをめざした組織開発(Organization Development)として発展した。(中村和彦) |
用語 | 補完代替医療 |
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概要 |
(英語訳 : Complementary and Alternative Medicine) 補完代替医療とは、科学的に検証されておらず、西洋医学を実践する通常の病院では行なわれていない医療をさす。 補完代替医療は、インドのアーユルヴェーダや中国医学など長い歴史を持つ伝統医療から、食事療法、リラクセーション、マッサージ、カイロプラクティックにいたるまで非常に多岐にわたる。そのため、現代西洋医学以外の医療という以外に共通する特徴をあげることは困難である。近年、補完代替医療を求める患者が世界的に増加しており、それと平行してその研究も活発に行なわれるようになっている。 たとえばアメリカでは、1992年米国国立衛生研究所内に年間予算200万ドルが設立された代替医療事務局(OAM)は、1998年に国立補完代替医療センター(NCCAM)に格上げされ、2005年には年間予算1億2110 万ドルで運営されるにいたっている。補完代替医療が地域の文化に根ざしていることが少なくない。その意味で、国際医療保健に携わる者は、活動する現場でどのような補完代替医療が行なわれているかを知ることが望ましいと考えられる。 |
用語 | 複合災害 |
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概要 |
(英訳:CHE, Complex (humanitarian) emergencies) Toole M(1995)は、 Complex emergencyを種々の要因、暴動や民族的色合いを持った紛争、内戦といった緊急で、食糧不足や大規模な住民移動が重なり、多くの犠牲者を出す状況と定義した。その後、Goodhan(1999)やBurkle F(2004)らは、政治的あるいは経済的要因にも注目している。国際赤十字によると、自然災害と人為的災害といった複雑な要因が組み合わさり、権威の失墜という背景に言及している。 現在WHO(世界保健機関)によると、Complex emergencies are situations of disrupted livelihoods and threats to life produced by warfare, civil disturbance and large-scale movements of people, in which any emergency response has to be conducted in a difficult political and security environment (2002). と定義づけられ、生活の破綻と戦争、市民生活の混乱と大規模な住民移動によって引き起こされた市民の生命の差し迫った状況の中で、緊急対応が政治的にそして安全環境の困難な中実施されなければならない、という緊急対応についても付言している。(高橋宗康) |
用語 | 西太平洋地域事務所 |
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概要 |
(英語訳:WPRO, Western Pacific Regional Office) WPRO(西太平洋地域事務局)は、WHO(世界保健機構)の西太平洋地域の代表として、フィリピンのマニラに地域事務所を持ち、西は中国、南はニュージーランド、東は太平洋の37の国・地域に事務所を有する。人口数では、世界の三分の一の16億を超える。目的は、WHOのミッションである世界のすべての人々の肉体的、精神的及び社会的な健康を得るために、あらゆる公衆衛生問題における西太平洋地域における対応を行うことである。 近年の主な活動は、はしかとB型肝炎を中心とした拡大予防接種計画、マラリア、結核、エイズを中心とした感染症対策、新興・再興感染症対策、特に新型インフルエンザ流行に備えての緊急対策に重点をおき、世界保健規則(IHR)が発効した2007年からは、これに基づき、この地域のすべての国々がこれらの疾患の流行に対しての検知対応する最低限の能力を持つ事を目的に、アジア太平洋地域における新興感染症対策5カ年活動計画が作成した。 そのほか、小児保健、リプロダクティブヘルス、非感染症疾患対策、緊急人道援助等、幅広い活動を行っている。さらに保健システム強化のためのキャパシティビルディングにも力を入れている。 2000年から2008年まで、日本の尾身 茂氏が事務局長を勤めていた。(仲佐保) |
用語 | 識字率 |
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概要 |
(英語訳 :literacy rate ) |
用語 | 貧困削減戦略ペーパー |
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概要 |
(英語訳: PRSPs: Poverty Reduction Strategy Papers) 貧困削減戦略ペーパーは、1999年に国際通貨基金(IMF)と世界銀行によって導入された低所得国における貧困削減のための枠組みである。貧困削減戦略ペーパーの作成が、IMFと世界銀行が主導している重債務貧困国(HIPC)イニシアチブによる債務削減や債務返済のための譲与的融資を受ける条件にもなっていた。 貧困削減戦略ペーパーは、低所得国の政府により、国内のステークホルダー及びIMFや世界銀行といった外部の開発パートナーらによる参加プロセスを経た上で準備される。その内容には、その国の様々な分野の成長と貧困削減を目的としたマクロ経済的、構造的、社会的政策やプログラム、資金の必要性や主な財源、貧困削減に関する中長期的な目標とそのモニターや評価方法が含まれる。概ね3年ごとに更新され、プログレスレポートにより各年の進捗状況が報告されている。 国連ミレニアム開発目標(MDGs)の目標と共通する部分があったため、貧困削減戦略ペーパーを作成することが、その国の政策としてMGDsの目標を取り入れることにつながったとも言われている。(北島 勉) |
用語 | 質的調査、質的調査方法 |
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概要 |
(英語訳: Qualitative Research, Qualitative methods) 質的調査とは、主に聞き取りの内容を集中して深く掘り下げるインタビューや地域に入り込み観察を行う参与観察などのあまり定型化されない調査方法で情報を収集し、その結果の報告に際しては、数値による記述や統計分析ではなく言葉による分析と記述を中心とする調査研究である。元々行動科学も社会科学も、伝統的には自然科学をモデルにした。しかし70年代に入り社会が急速に変化し、その結果、生活世界が多様化し人間の社会や行動を扱う科学者の前にこれまでにない新しい社会の文脈や視野が現れだした。それまで研究者たちが当たり前のように扱ってきた演繹的方法は、研究対象の多様性に十分に対応できないという認識が高まり、既成の理論の検証ではなく、現象の新たな側面を発見し現場での情報、データに基づいて新たな理論を生成する帰納的方法が注目を浴びるようになる。それまでの実証主義と呼ばれるアプローチを中心とした「科学」的思考法と研究方法に対する異議申し立てが行われたのである。社会の中の現象にアプローチするために厳密に定義された既存の概念と理論から出発し、限定概念を使用する代わりに、問題を大まかに示すだけの「感受概念」を出発点とし、調査対象や物の見方に開放性を持たせるアプローチが質的調査の基本となっている。尚、近年、帰納的方法に加えて 発想法(仮説形成)も提唱されている。質的調査方法は、フィールドワークを中心にインタビュー、参与観察、フォーカス・グループ・ディスカッション、体系的データ収集法など多岐にわたる。(松山章子) |
用語 | 質的調査・研究、質的調査方法 |
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概要 |
(英語訳: Qualitative Research, Qualitative methods) 質的調査・研究とは、主に集中して深く掘り下げるインタビューや参与観察のような余り定型化されない方法でデータを集め、その結果の報告に際しては、数値による記述や統計的な分析というよりは言葉による記述と分析を中心にする調査研究である。元々行動科学も社会科学も、伝統的には自然科学をモデルにしており特に1950年代から1970年代後半まではかなりの勢力を保っていた。しかし70年代後半に入って社会が急速に変化し、その結果、生活世界が多様化しこれまでにない新しい社会の文脈や視野が現れ出した。そしてこれまで研究者達が当たり前のように用いてきた演繹方法は、研究対象の多様性に十分に対応できないという認識が高まり、既成の理論の検証ではなく、現象の新たな側面を発見し現場での情報、データに基づいて新たな理論を生み出す「帰納方法」が注目を浴びるようになる。人類学、社会学双方の分野でそれまでのいわゆる「科学」的思考法と研究方法、特に実証主義と呼ばれるアプローチに対する異議申し立てが盛んに行われ始めた。社会の中の現象にアプローチするために、厳密に定義された既存の概念と理論から出発する代わりに、問題を大まかに示すだけの「感受概念」を出発点とするような方法が質的調査・研究の基本となっている。なお、質的調査方法はフィールドワークなどを中心に、インタビュー、参与観察、フォーカス・グループ・ディスカッション、体系的データ収集法など非常に多岐にわたる。(松山章子) |
用語 | 適正技術 |
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概要 |
(英語訳:Appropriate technology) 適正技術とは、その技術の受容者であるコミュニティの環境、文化や習慣、社会経済的背景などに配慮した技術をいう。1973年にSchumacherが「small is beautiful」で提唱した中間技術(intermediate technology)の概念は、適正技術の重要性と理論化に大きな役割を果たした。国際協力において、農業、灌漑、水供給、小工業、環境など多くの分野で適正技術の開発と普及が行なわれている。とくに、近年は、地球温暖化や情報化社会の中で、環境に負担をかけず、資源を浪費せずに、低コストで維持できる適正技術の再評価が行われている。 保健医療分野において、適切技術はアルマ・アタ宣言においてプライマリヘルスケアの重要な原則の一つとして位置付けられた。医療費、施設の維持費、電気などの設備の有無、技術を使いこなせる人材の有無、文化や習慣などの種々の要素から、それぞれの保健医療施設やコミュニティに見合った適正技術を考える必要がある。(中村安秀) |
用語 | 避妊法/避妊法の種類 |
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概要 |
(英語訳:Contraceptive method/Kinds of contraceptive method) 妊娠と避妊の定義は、国、地域、宗教、時代などにより異なるが、本稿では妊娠は「受精卵が着床することで成立」し、避妊法とは「妊娠の成立を阻害する方法」と定義する。 自然な状態でのヒトの妊娠成立は、視床下部-脳下垂体-卵巣系のホルモン分泌による卵の成熟と排卵、性交渉による精子の卵管への移動、精子の卵への侵入による受精、受精卵が子宮内に移動し内膜へ着床する、という経過をたどる。よって、この過程のいずれかを阻害すれば避妊を行うことが可能となる。 健康な男女が避妊をせずに標準的な性交渉を持つ場合、85%が1年以内に妊娠するとされている。よって避妊法の有効率は、年間の妊娠成立率で評価できる。 一方、避妊法は古典的方法と現代的方法に分けることができる。古典的方法としては、排卵周辺期に性交を行わない(周期法)、腟内に射精しない(性交中断法)などがある。いずれを完璧に行っても年間3-5%が妊娠する。これらの方法は、しばしば不完全に実施される可能性が高く、25-27%程度が妊娠してしまうと推計されている。 現代的方法として以下の方法(カッコ内はメカニズム)がある。ホルモン剤(排卵または着床を抑制、子宮頸管の粘液変化により精子の侵入を抑制)は経口薬、注射あるいは皮下埋め込み型の徐放剤が利用できる。経口薬は毎日服用する必要があるが、徐放剤では注射で3ヶ月、皮下埋め込み型で3年間効果が持続する。年間妊娠率は0.05-0.3%である。 子宮内避妊具(Intra-uterine device: IUD、着床または精子の受精能抑制)は、清潔操作を行い子宮内に挿入する必要があるため、一定の技術、器具、施設を必要とすることが、その普及を阻害する。年間妊娠率は0.2-0.6%である。 コンドーム(精液の腟内侵入を防ぐ)の年間妊娠率は2%程度と他の方法に比べて高くなるが、性感染症の予防手段としても有効である。 またいわゆる永久避妊法として、男性では精管、女性では卵管を外科的に結紮・切除する方法がある。(松井三明) |
用語 | 重症急性呼吸器症候群 |
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概要 |
(英語訳: SARS, Severe Acute Respiratory Syndrome) |