国際保健用語集
用語 | エンデミック、エピデミック、パンデミック |
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概要 |
(英語訳:Endemic, Epidemic, Pandemic) エンデミック、エピデミック、パンデミックはいずれも疾病の罹患状況(流行状況)を疫学的に説明する用語であり、違いを理解しておくことが重要である。これらは流行規模の違いがあり、地域的規模なものはエンデミック、中規模なものはエピデミック、そして大規模で広範囲にわたるものがパンデミックである。 エンデミックは、一定の地域または対象人口において、ある疾患が、継続的(慢性的)に発生している状況を意味する。たとえば風土病と言われるものがこのエンデミックにあたる。 エピデミックは、ある地域または対象人口において、ある疾患で、通常より多数の罹患が一定期間に急に発生する状況を意味する。その地域や対象人口に今まで存在しなかったまたは過去に存在していたが最近は曝露することが少なかった病原体が外部から流入すること、つまり集団免疫が成立していない状況で生じることが多い。突然生じるため、予測が困難なことが多いが、早期に状況を察知するシステムを確立し、察知した場合には早期に対策を講じることで、拡大を防ぎ、社会への影響を軽減することができる。 パンデミックは、エピデミックとなった疾患が、ある地域、国、大陸を超えて広範囲で同時期に流行し、大多数の人々がその疾患を罹患する状況を意味する。疾患によっては多数の死者を出す場合もある。パンデミックについてもエピデミックと同様に、国際的にその状況を早期に察知し、対策を講じる必要があり、世界保健機関(WHO)を中心に、各国政府、自治体、経済産業団体などが行動計画を作成し、パンデミックに備えている。(宮野真輔) |
用語 | エンパワメント |
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概要 |
(英語訳:Empowerment) エンパワメントは、一般に個人や社会集団が当事者のニーズや関心を表明し、意思決定に参加する手段を講ずることによって、当事者のニーズが満たされるような政治的、社会的、文化的行動を起こすことができるようになることを意味する。個人のエンパワメントでは、たとえば健康を事例とすると、自分の健康に関する意思決定ができ、健康の保持増進のために自分の生活をコントロールする能力を身につけることに該当する。一方、コミュニティ・エンパワメントでは、コミュニティに属する人々が集団として行動し、自分たちの健康やQOLに関わる要因に対して自発的に調整することに該当する。エンパワメントは、ヘルスプロモーションを達成するための重要な方略でもある。人々は、外部者からエンパワーされるのではなく、自分が本来もっている力を用いて自らをエンパワーするのであり、外部者はそのプロセスを促進するファシリテーター、触媒、あるいは伴走者としての役割を果たす。(柳澤理子) |
用語 | ヘルスセンター・ヘルスポスト |
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概要 |
(英語訳: Health Center/Health Post) ヘルスセンターはコミュニティーに設置され、住民に近い公的保健医療施設である。住民に各種疾病予防のためのサービス(予防接種、妊産婦健診)や健康教育、および基本的な治療面での保健医療サービスを提供する。名称、配置される人員、機能、設置基準などは国によって異なり、医師が常駐し入院設備を有して24時間機能する施設、看護師のみの配置で限られた時間のみ機能している施設、分娩サービスの有無などさまざまである。国の縦割りプログラムを一手に引き受けて住民にサービス提供する場でもあり、保健スタッフは多岐にわたる業務に追われる。 ヘルスポストは一般的にはヘルスセンターの下に配置され、さらに簡便な施設である。通常医師は配置されず、国によっては保健スタッフの常駐がなく管轄のヘルスセンターから予防接種などの場合に保健スタッフが派遣されるといった体制をとる所もある。 ヘルスセンター・ヘルスポストはいずれも住民に最も身近な医療機関であり、国により人口5000人~3万人に一箇所といった割合で設置される。それでも人口密度の低い地方ではそこまでのアクセスは非常に悪く、また、保健人材の配置が足りない、基本的な医薬品が届いていないといった課題が起こりうるため、住民に利用されないケースも散見される。また、上位レベルの医療機関とのリファラルシステムの構築が、ヘルスセンター機能を活性化するために不可欠である。(江上由里子) |
用語 | リファラルシステム |
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概要 |
(英語訳:Referral System) リファラルシステムは患者紹介とは医療機関を受診した患者の診療を他の医療機関に依頼することで、診療所・保健センター・地域の一次病院などの医療機関では診療できないより高度な医療行為が必要になるときや重症患者、専門外の疾患が疑われる場合、高次医療機関へ紹介・搬送して診療することで「患者紹介システム」や「病診連携システム」とも呼ばれる。なお、緊急時、対応不可能な際に患者を搬送することはこのリファラルシステムとは性質を異にする。 一方、治療により回復期に入った患者には地域の身近な医療機関を紹介し、患者はそこで回復支援やリハビリを受けて復帰を測る。このように、地元の医療機関の方が通院に適切な場合や、その患者の紹介もと出会った医療機関に再び紹介することをカウンターリファラル(逆紹介)と言う。地域の医療機関から大病院への「紹介」、大病院から地域の医療機関への「逆紹介」が円滑に行われることで、中小の医療機関と大病院が各々の役割を効果的に果たすことが期待される。 日本では2015年の医療保険制度改革により近年、大病院に地域の診療所との連携を進めるなどの責務が規定され、紹介状なしで受診する場合、通常の初診料に加え別途5000円(歯科は3000円)以上の特別料金を徴収するようになった。他の医療機関を受診するよう大病院から紹介を受けても患者が引き続き大病院の受診を希望する場合は、再診でも特別の料金がかかる。患者の高次病院への集中を防ぐという点でも一定の効果を挙げている。 開発途上国においても各レベルの医療機関の基準を設定し、機能分化と紹介の仕組みが作られているが、現実には医療資源の不足や患者の希望から、上位の医療機関を直接受診する患者が多く、リファラルシステムは制度として構築されていても適切に機能していない場合が少なくない。 リファラルシステムでは、患者紹介に加えその機能を地域・コミュニティーにまで広げ、人々が医療サービスにアクセスできる体制や情報・知識・技術の伝達までを含めた広義のリファラルシステムを考えることでUHC達成への貢献が期待される。(江上由里子) |
用語 | 英国国際開発省 |
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概要 |
(英語訳:DFID, Department for International Development) 英国の開発協力を中心的に担う組織として、1997年に設立され、アフリカ、アジア及び中東に対する支援を中心とした援助機関。英国の全ODA(2017年)139.3億ポンドであるが(GNI比0.7%を実現している)、その72.5%がDFIDを通じて供与されている。 優先課題(Strategic Objectives)は、「世界的平和・安全・ガバナンスの強化」、「危機に対する強靭性や対応力の強化」、「世界的繁栄の推進」、「極度の貧困への対応と最も脆弱な人びとへの支援」、「英国援助の資金に見合う価値と透明性の向上」の5つを掲げている。 英国ODAは62.4%が二国間協力(2017年)で、DFIDを通じた二国間協力のうち主要な協力相手先はアフリカ(25.9億ポンド:二国間協力の58.6%)であり、次いでアジア(15.7億ポンド:35.5%)と大部分を占めている。 保健分野は、2016年の二国間協力では人道支援、政府・市民社会についで、10.4億ポンド(12.2%)と3番目に大きい支援分野となっている。(平岡久和) |