国際保健用語集
用語 | 国際緊急援助隊 |
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概要 |
(英語訳:JDR, Japan Disaster Relief Team) 日本の海外における災害に対する国際緊急援助は人的援助と物的援助があるが、国際緊急援助隊は人的援助に含まれる。1979年に内戦でタイに脱出したカンボジア難民に対して政府医療チームを派遣したのがきっかけになり、日本政府は1982年に国際緊急医療チーム(JMTDR)を設立した。紛争に起因しない人為的災害や自然災害に対応するという法整備(1987年 国際緊急援助隊は派遣に関する法律(JDR法))が行われ、各種チームが派遣されるようになった。5つのチームで構成されている。 1)医療チーム:現地で医療活動を実施。医療チームとして、タイプ2の国際認証を受け、入院や手術を実施展開できる(派遣実績は57回 2018年9月現在)。 2)救助チーム:要救助者の捜索、救助、応急処置、移送に当たる。国際捜索救助諮問グループが定めるヘビー級を2010年3月に認定取得した(派遣回数20回 2018年9月現在)。 3)感染症対策チーム 2015年10月 発足。疫学、検査診断、診療・感染制御、公衆衛生対応、ロジスティックからなる。(派遣実績は2回 2018年9月現在)。 4)専門家チーム 被害の発生・拡大を防止する助言や指導を行う。関係省庁・自治体などの各分野の専門家から構成される(派遣回数 49回 2018年9月現在)。 5)自衛隊部隊:被災状況広範囲・大規模であるときに、自衛隊員によって、輸送、給水、医療・防疫を実施する(派遣回数 19回 2018年9月現在)。(高橋宗康) |
用語 | 直接服薬確認短期化学療法 |
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概要 |
(英語訳 : DOTS, Directly Observed Treatment, Short Course) DOTSは“Directly Observed Treatment, Short Course”の略称で、1994年にWHO(世界保健機関)が作成した「効果的な結核対策のための枠組み」(Framework for Effective Tuberculosis Control)に提示された結核対策の戦略であり、以下5つの政策要素から構成されている。 (1)全国を網羅した既存の制度の中での結核対策を強化するため、政府が強力に取り組む。 (2)有症状受診者に対する喀痰塗抹検査により結核患者を発見する。 (3)標準短期化学療法による6~8ヶ月間の適切な治療を服薬確認しつつ提供する。 (4)薬剤安定供給システムを確立する。 (5)地域における結核対策の実施状況をモニタリングし、定期的に評価するために、結核患者台帳を整備し、それに基づく患者の発見と治療結果のまとめとを報告するシステムを確立する。(大角晃弘) |
用語 | 短期直接監視下治療 |
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概要 | →直接服薬確認短期化学療法 |
用語 | 直接監視下治療 |
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概要 | →直接服薬確認短期化学療法 |
用語 | ストップ結核パートナーシップ |
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概要 |
(英語訳 : Stop TB Partnership) 世界の結核制圧を目標として、2000年のアムステルダムで開催された結核高蔓延20カ国による外相会議で設立が呼び掛けられ、2001年にスイスのジュネーブに設立されたパートナーシップである。現在世界100カ国以上で、1500ほどのパートナーで構成されており、構成員は政府機関(保健省等)・研究機関・国際機関・ドナー・非政府組織(NGO)さらに、個人等であり、あらゆる個人や団体が参加することが可能である。 本パートナーシップの目標達成のための指標として、設立当初は「2005年までに70%の感染性結核患者を発見し、その内の85%が治癒すること」と設定され、その後国連ミレニアム開発目標(MDGs、Millennium Development Goals)の指標を補足するものとして、以下の指標が設定されている。「2015年までに、結核死亡数と結核有病率とが1990年における数値を半減させる」、「2050年までに、世界の結核罹患率が人口100万人対1以下(=結核制圧)となるようにする」。 現在このパートナーシップには10の作業部会(薬剤耐性結核、HIV合併結核、結核検査強化、結核伝播終息(感染防御)、公私連携強化、小児結核、新結核診断技術開発、新抗結核薬開発、新結核ワクチン開発、結核患者権利保護の各作業部会)があり、各分野から結核終息に向けてのあらゆる資源と技術の投入を促進している。 日本においても同様な趣旨で、2007年に「ストップ結核パートナーシップ日本(STBJ)」が設立され、日本国内でその趣旨に賛同する個人や団体による世界の結核終息を目指す連携が形成されつつある。(大角晃弘) |
用語 | 貧困削減戦略ペーパー |
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概要 |
(英語訳: PRSPs: Poverty Reduction Strategy Papers) 貧困削減戦略ペーパーは、1999年に国際通貨基金(IMF)と世界銀行によって導入された低所得国における貧困削減のための枠組みである。貧困削減戦略ペーパーの作成が、IMFと世界銀行が主導している重債務貧困国(HIPC)イニシアチブによる債務削減や債務返済のための譲与的融資を受ける条件にもなっていた。 貧困削減戦略ペーパーは、低所得国の政府により、国内のステークホルダー及びIMFや世界銀行といった外部の開発パートナーらによる参加プロセスを経た上で準備される。その内容には、その国の様々な分野の成長と貧困削減を目的としたマクロ経済的、構造的、社会的政策やプログラム、資金の必要性や主な財源、貧困削減に関する中長期的な目標とそのモニターや評価方法が含まれる。概ね3年ごとに更新され、プログレスレポートにより各年の進捗状況が報告されている。 国連ミレニアム開発目標(MDGs)の目標と共通する部分があったため、貧困削減戦略ペーパーを作成することが、その国の政策としてMGDsの目標を取り入れることにつながったとも言われている。(北島 勉) |
用語 | 住民参加 |
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概要 |
(英語訳:Community Participation) ある地域で実施されるプロジェクト/事業に、その地域住民自身が参加することである。住民参加の概念は幅広く、誰が参加するのか、何に参加するのか、どのような形で参加するのかなどによって実相は異なってくる。Arnstein(1969)は、住民参加のレベルを8段階に分類した。世論操作(manipulation)および治療(therapy)の段階では、住民のエンパワメントは目的ではなく、行政など事業の実施主体が住民を教育したり間違った行動を治そうとしたりする。この2つは無参加(nonparticipation)レベルである。次が情報提供(informing)、意見聴取・相談(consultation)、懐柔(placation)の段階で、住民は事業実施主体から説明を受け、意見を述べる機会を与えられ、譲歩もしてもらえるが、意思決定には十分参画できず、形式的参加(tokenism)のレベルである。より進んだ住民参加の段階は、協力(partnership)、権限移譲(delegated power)、住民主導(citizen control)であり、意思決定に参加し、住民自身が計画を策定したり遂行したりする。住民参加によって人々は協働して問題を解決する能力を向上させ、コミュニティの一員である自覚と互助の意識を高め、最終的には共同体としての一体感を向上させて、他の課題も自分たちで解決しようという意欲が現れる。このように住民参加は、コミュニティ・エンパワメントのプロセスを促進する。 (柳澤理子) |
用語 | 職業上の安全のおよび健康を促進するための枠組みに関する条約 |
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概要 |
(英語訳 : Promotional Framework for Occupational Safety and Health Convention) ILO(国際労働機関)の第187号条約として2006年に採択された。本条約の目的は、すべての働く人々の健康と安全の向上のために安全健康予防文化の確立を推進することである。そのために、職場における健康および安全リスク評価活動を推進し、見つかったリスクに対応する。また、政府は労働者、経営者代表と協力して5年程度の中期的な国家労働安全衛生計画を策定し実施する。その過程において、国内の労働安全衛生の現状を分析し、優先行動課題を決定して到達目標を設定する。 アジア諸国では本条約を参照しながら自国の働く人々 の健康と安全対策を促進している。ベトナム、ラオス、インドネシア、タイ、中国、モンゴル、シンガポールなどが国家労働安全衛生計画を策定し、実施を進めている。 各国はそれぞれの国家計画の枠組みの中で、労働安全衛生法の強化と効果的な実施の他に、中小零細企業、家内労働、農業、鉱山や建設業等のリスクの高い職場の対策強化、外国人労働者の労働安全衛生保護拡大等の重要課題にも取り組んでいる。 この条約により、労働安全衛生マネジメントシステムに基づいた体制と実施の継続的な改善、ならびに労働安全衛生が国としての重要課題に位置づけられることが期待されている。(和田耕治) |
用語 | 拡大予防接種計画 |
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概要 |
(英語訳 : EPI, Expanded Programme on Immunization) 世界のすべての子どもたちを予防可能な感染症から守るために、基本的なワクチン接種の推進を目的としてWHO によって開始されたプログラムである。EPIは、1978年にアルマ・アタ宣言として採択された“health for all by 2000”を達成するために、不可欠な要素のひとつと位置づけられた。EPIが開始された背景には、天然痘の流行がワクチンの普及によって制圧され、さらに根絶も達成したことにより高い費用対効果が実証されたという事実がある。1974 年にEPIが始まった当初は、BCG、ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ、麻疹の6ワクチンが対象であったが、その後B型肝炎やインフルエンザ菌b型(Hib)も推奨対象に加わり、さらに2000年のGAVIの設立によってEPI活動は加速され新しいワクチンである肺炎球菌結合型やロタウイルスも乳幼児の疾病負荷を軽減するために有用なワクチンと考えらその対象ワクチンは拡大しつつある。予防接種は、小児のみならず、年長児や思春期世代、妊婦においても健康を守るために不可欠な手段の一つである。ポリオ根絶は目標達成の最終段階に入り、麻疹や新生児破傷風の排除も世界各地で成果をあげつつあるが、これらの基本になるのはEPIである。(中野貴司) |
用語 | GAVI(ワクチンと予防接種のための世界同盟) |
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概要 |
(英語訳;GAVI, The Global Alliance for Vaccines and Immunization) 貧困地域に住む子どもたちの命と健康を守ることを目的として、十分に普及していないワクチンや新しいワクチンを届けるために、2000 年に結成された同盟で、事務局はスイスのジュネーブにある。開発途上国及び先進国政府、ワクチン製造会社、NGOs、研究機関、ユニセフ、WHO、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団、世界銀行など公的および私的組織により構成されている。1974年に始まった拡大予防接種計画(EPI)により、感染症の予防手段であるワクチンは世界に普及し、基本的な6種類のワクチンの接種率は80%にまで達したとされた。しかし1990年代にその普及の進展は頭打ち状態となり、当時は子どもたちをさらに守ることのできる新しいワクチンも開発されたが、それらは貧困地域には浸透せず、世界の中での格差は広がるばかりであった。新しいワクチンは、非常に高価であるという問題点も存在した。先進国では10種類を超えるワクチンが乳幼児に接種されていたにもかかわらず、開発途上国では基本的なワクチンさえ届いていない地域もあった。この状況を打破するために、公的組織と私的組織が一緒になって活動する本同盟が発足した。現在GAVIが掲げる主な活動目標は、1.世界全体の接種率向上、2.保健医療システムにおける予防接種の有効性と能率性の強化、3.国の予防接種プログラムの維持、4.ワクチンや関連製品の市場の形成である。また、「予防接種のための国際金融ファシリティ(IFFIm)」による「ワクチン債」の発行による革新的な資金調達も行ってきた。(中野貴司) |