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国際保健用語集

用語  地域歯周病指数
概要 (英語訳:CPI, Community Periodontal Index)

歯周病(periodontal disease)は、400種以上の口腔内常在菌のなかの約10種類の特異な歯周病細菌による感染症であると共に、口腔清掃、喫煙、ストレスなどに関連する生活習慣病としても定義されている。歯肉部の炎症に限局する歯肉炎(gingivitis)と歯槽骨に炎症が進展した歯周炎(periodontitis)に分類される。全ての歯肉炎が必ずしも歯周炎には進行せず、ある進行リスクが生じた部位に急激に骨の吸収が起こり、歯周病変が進行すると考えられている。この部位特異性に関するエビデンスが報告されるにつれて、1940~1960年代にかけて提唱された歯周病の進行度をスコア化してその1歯当たりの平均値で表した歯周病の指標(PMA index, Periodontal Index等)を改善するために、1977年にWHOによってCPITN(community periodontal index of treatment needs)が提案された。1997年に出版された「WHO口腔診査法第4版」からは、CPI(community periodontal index)と表記されるようになった。

診査法は、WHO型プローブを用い、歯周部位のプロービングによって行う。正常な場合をコード0、出血が見られる場合をコード1、歯石の存在する場合をコード2、4~5mmの歯周ポケットが存在する場合をコード3、6mm以上のポケットが存在する場合をコード4とする。このコードは、0~4のスコアを平均して使用するものではない。

全ての歯の診査を行い、上下顎、前歯・臼歯部の6ブロック(セクスタント)に分け、各セクスタントで最も高い数値の歯のコードを選ぶ方法と、前歯部は上顎右側中切歯、下顎左側中切歯を診査し、臼歯部は、第一大臼歯と第二大臼歯を診査し、各最大コードを選ぶ方法がある。

1995年からWHOのGlobal Oral Data Bankに100カ国以上の35~44歳の住民のCPIが公開されている。(深井穫博)
用語 ESD
概要

(英語訳:Education for sustainable development)
(日本語訳:(国連)持続可能な開発のための教育)

2002年のヨハネスブルグサミットにおいて、ESDの推進が提言され、我が国はESDの推進の10年を提唱した。

ESDの概念は、1980年の国連環境計画(UNEP)、世界自然保護連合(IUCN)、世界自然保護基金(WWF)が提出した「世界環境保全戦略」で、「持続可能な開発」の概念が示されることに始まる。1984年国連に設置された「環境と開発に関する世界委員会(ブルントラント委員会)」(委員長:後にノルウェーの首相および世界保健機関事務局長となったブルントラント博士)の提案を受け、国連総会で承認された。その報告書"Our Common Future"(1987)(『地球の未来を守るために』)では、環境保全と開発の関係について「将来世代のニーズを損なうことなく現在の世代のニーズを満たすこと」という「持続可能な開発(SD)」の概念が打ち出された。

我が国では、2002年のヨハネスブルグサミット以後、世界レベルでのESDの推進を提唱しており、2005年から10年間を「ESD推進の10年」として国連総会で提唱し、採択された。

ESDはEducation for Sustainable development であり、on Sustainable developmentでない。持続可能な社会を作るために、学校や地域における教育の必要性が高い。それには、あらゆる学習や啓発活動を通じて、持続可能な開発のあり方を考え、その実現を推進するための場や機会を地域で提供することが必要である。その内容も、環境教育だけでなく、文化の独自性を尊重し、人権、平和の構築、異文化理解、健康の増進、自然資源の維持、災害の防止、貧困の軽減などを通じて、公正で豊かな未来を創る営みである。

ESDの普及・推進のためにUNESCO(国連教育文化科学機関)が国連で主導的役割を果たすことが決まった。また、国連大学(UNU: United Nations University)もESD推進のためのモデル地区としてRCE(Regional centers of expertise)を2005年に世界7カ所(我が国では仙台と岡山市域の2カ所)を定め、地域レベルでのESD推進のモデル事業の推進と研究の推進を行っている。

我が国は、2002年のヨハネスブルグサミット以後、世界レベルでのESDの推進を提唱しており、2005年から10年間を「ESD推進の10年(2005-2014年)」として国連総会で提唱し、採択された。ESDの10年の最終年である2014年にユネスコと日本政府が共催して、名古屋市と岡山市で「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議」が開催された。

ESDの理念、活動自体の波及は極めて限定的であったが、2015年9月に国連総会でSDG(Sustainable Development Goals)が採択される等、SD (Sustainable Development)に関する理念に影響を与えたといえる。持続可能な社会づくりの担い手をはぐくむには教育(学校教育・社会教育・生涯教育等)が重要であることはいうまでもない。(山本秀樹)

用語 GAVI(ワクチンと予防接種のための世界同盟)
概要 (英語訳;GAVI, The Global Alliance for Vaccines and Immunization)

貧困地域に住む子どもたちの命と健康を守ることを目的として、十分に普及していないワクチンや新しいワクチンを届けるために、2000 年に結成された同盟で、事務局はスイスのジュネーブにある。開発途上国及び先進国政府、ワクチン製造会社、NGOs、研究機関、ユニセフWHO、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団、世界銀行など公的および私的組織により構成されている。1974年に始まった拡大予防接種計画(EPI)により、感染症の予防手段であるワクチンは世界に普及し、基本的な6種類のワクチンの接種率は80%にまで達したとされた。しかし1990年代にその普及の進展は頭打ち状態となり、当時は子どもたちをさらに守ることのできる新しいワクチンも開発されたが、それらは貧困地域には浸透せず、世界の中での格差は広がるばかりであった。新しいワクチンは、非常に高価であるという問題点も存在した。先進国では10種類を超えるワクチンが乳幼児に接種されていたにもかかわらず、開発途上国では基本的なワクチンさえ届いていない地域もあった。この状況を打破するために、公的組織と私的組織が一緒になって活動する本同盟が発足した。現在GAVIが掲げる主な活動目標は、1.世界全体の接種率向上、2.保健医療システムにおける予防接種の有効性と能率性の強化、3.国の予防接種プログラムの維持、4.ワクチンや関連製品の市場の形成である。また、「予防接種のための国際金融ファシリティ(IFFIm)」による「ワクチン債」の発行による革新的な資金調達も行ってきた。(中野貴司)