国際保健用語集

用語 避妊法/避妊法の種類
概要 (英語訳:Contraceptive method/Kinds of contraceptive method)

妊娠と避妊の定義は、国、地域、宗教、時代などにより異なるが、本稿では妊娠は「受精卵が着床することで成立」し、避妊法とは「妊娠の成立を阻害する方法」と定義する。

自然な状態でのヒトの妊娠成立は、視床下部-脳下垂体-卵巣系のホルモン分泌による卵の成熟と排卵、性交渉による精子の卵管への移動、精子の卵への侵入による受精、受精卵が子宮内に移動し内膜へ着床する、という経過をたどる。よって、この過程のいずれかを阻害すれば避妊を行うことが可能となる。

健康な男女が避妊をせずに標準的な性交渉を持つ場合、85%が1年以内に妊娠するとされている。よって避妊法の有効率は、年間の妊娠成立率で評価できる。

一方、避妊法は古典的方法と現代的方法に分けることができる。古典的方法としては、排卵周辺期に性交を行わない(周期法)、腟内に射精しない(性交中断法)などがある。いずれを完璧に行っても年間3-5%が妊娠する。これらの方法は、しばしば不完全に実施される可能性が高く、25-27%程度が妊娠してしまうと推計されている。

現代的方法として以下の方法(カッコ内はメカニズム)がある。ホルモン剤(排卵または着床を抑制、子宮頸管の粘液変化により精子の侵入を抑制)は経口薬、注射あるいは皮下埋め込み型の徐放剤が利用できる。経口薬は毎日服用する必要があるが、徐放剤では注射で3ヶ月、皮下埋め込み型で3年間効果が持続する。年間妊娠率は0.05-0.3%である。

子宮内避妊具(Intra-uterine device: IUD、着床または精子の受精能抑制)は、清潔操作を行い子宮内に挿入する必要があるため、一定の技術、器具、施設を必要とすることが、その普及を阻害する。年間妊娠率は0.2-0.6%である。

コンドーム(精液の腟内侵入を防ぐ)の年間妊娠率は2%程度と他の方法に比べて高くなるが、性感染症の予防手段としても有効である。

またいわゆる永久避妊法として、男性では精管、女性では卵管を外科的に結紮・切除する方法がある。(松井三明)
参考 World Health Organization Department of Reproductive Health and Research (WHO/RHR) and Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health/Center for Communication Programs (CCP), Knowledge for Health Project. (2011) Family Planning: A Global Handbook for Providers (2011 update).